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【Event report】SDGS-ID Kick-off Symposium

10/27/2020
シンポジウム開催報告

2020年10月27日に、「感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点キックオフシンポジウム」がオンラインにて開催され、学内研究者や学生を含め、約160名が参加しました。新型コロナウイルス専門家会議や感染対策分科会などで活躍する押谷仁教授をはじめ、東北大学内の著名な研究者の方々にお集まりいただき、ご講演を頂きました。また、ポストコロナ社会において、どのような社会構築が求められているのか総合討論を行い、熱い議論が繰り広げられました。

〜開会挨拶〜

大野総長、八重樫医学系研究科科長、小谷理事よりご挨拶を頂きました。大野総長からは、感染症対策と社会活動の両立という課題に対して、本学の研究資源を結集させて多くの部局が関わっていってほしいという挨拶を頂き、八重樫研究科長からは、持続可能な社会を実現していくためには、生命科学分野だけでなく、他の部局との連携・融合が不可欠である、というお言葉を頂きました。また、小谷理事(研究担当)より、本学の特別研究プロジェクトである「ポストコロナ社会構築研究スタートアップ支援」の紹介を頂きました。

〜基調講演:感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点の目指すもの〜

基調講演として、本拠点代表者、医学系研究科微生物学の押谷仁教授より、「感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点の目指すもの」というタイトルで、感染症と人類の歴史から現在の課題に至るまで、網羅的に幅広く講演頂きました。新興感染症の歴史や、国際的な枠組みなどについての総論的な話から始まり、今回の新型コロナウイルス感染症に対する欧米やアジア、日本の対策の違いなどについてもお話しいただきました。

一方で、今回のパンデミックによって浮き彫りになった様々な課題についても言及されました。世界保健機関(WHO)を中心とした国際保険の枠組みは限界に達しているのではないかと疑問を投げかけており、またCOVID-19に対して、自然科学技術の役割に過度な期待が寄せられてきたとも指摘しています。例えば、ワクチンや抗ウイルス薬が短期的な問題解決につながるかどうかは確定的でなく、数理モデルにも多くの課題が残っています。

このような限界を人類は受け入れつつ、アジア特有の疫病に対する歴史的な捉え方を見直すなど、人文社会学的な視点も含めて、ポストコロナ社会を再構築する必要があるとしています。今後は、感染症といかに共生するか、どのようにしてレジリエントな社会をデザインしていくか、若手研究者・大学院生などの柔軟な発想や、人文社会学的な視点を含めた、真に学際的な研究が必要であるとメッセージを残されました。

〜8名の先生による新型コロナウイルス感染症に関する各研究課題の講演〜


中谷友樹(環境科学研究科教授) COVID-19流行の時空間推移と人の動き

中谷先生は、「移動制限措置に基づく感染拡大防止戦略(日本モデル)が果たした効果およびその社会的影響はどうだったか?」という研究テーマに対して、空間疫学・統計学・社会科学を融合した研究を行っています。人の位置情報のビックデータを基にして、「人の動きの変化」と「感染拡大/抑制」の双方的な問題をどう経験的・理論的に整理するか、研究を行っています。
一方、緊急事態宣言による精神的・健康的な影響というのもわかってきているため、この研究が今後の「新しい日常」に、どう活かせるかという視点から、今後の都市のあり方について考える必要があると述べました。


佐藤弘夫(文学研究科教授)      日本人は疫病をどうみてきたか

佐藤先生は、日本文化学・宗教・死生観などを専門とされています。近代以前は疫病をもたらす存在は神(疫病神)とされていたと佐藤先生は語ります。そして、疫病神は退治する対象ではなく、厚くもてなす対象であったとされています。疫病や災害によっていつ死ぬかわからない時代であったため、生と死を貫くストーリーという死生観が必要であり、疫病神は現世と来世を繋ぐ救済の神として捉えられていました。
しかし、近代化により疫病神は共生者から撲滅すべき対象へなってしまったため、人々は生と死を貫くストーリーを失い、死は未知の暗黒世界と化しています。佐藤先生は、生の意味・死の意味を根本から問い直し、いかにして「生」と「死」を貫くストーリーを再構築するかが問われていると語りました。


水藤寛 (材料科学高等研究所副所長) 接触ネットワーク評価のための数理モデル

 材料化学研究所の数学グループに所属する水藤先生は、数理モデルを専門としています。ある現象を自然科学に基づいて「モデル化」し、そのモデルに対して「観測データ」を外挿する事によってその現象を抽象化・一般化し、今起きていることを理論的に捉える研究を行っています。
 今回の研究に関しては、遷移グラフによる接触時間の評価モデルを基にして、人々の行動変容で接触の期待値はどのように変わるかが推定可能になります。さらにそこから飛躍して、接触データを得ることで、逆に接触リスク評価や行動変容の指針につながる可能性があるのではないかと指摘しています。


今村文彦(災害科学国際研究所所長)  過去の災害経験を未来に活かすー学際研究重点拠点での提案ー

今村先生は、災害科学国際研究所における取り組みとして、2つの活動を紹介されました。過去と現在をつなぐ事例研究として、歴史学と医学の融合的観点から、文理医連携研究「疫病退散プロジェクト」を開始しています。「スペインかぜと関東大震災」ならびに「東日本大震災と新型コロナウイルス感染症」を読み解くことで、何が教訓として引き継がれたのか、何を教訓として残していくべきかを提唱するプロジェクトです。
 一方で、現在と未来をつなぐ戦略として、事業継続計画(BCP)の提案を行っています。企業の活動を事例に、感染拡大に際する供給力の低下・需要の低下に備えた事業継続戦略が必要であるとされる中、今回の新型コロナウイルス対応において、企業がどれくらいの影響を受けたのか、雇用や財政などの面から分析する研究を行っています。これらの成果を地域や教育関係でのBCP改善に結びつけたいと考えています。


戸澤英典(法学研究科教授)    アフターコロナの国際関係の展望

法学研究科の戸澤英典教授より、アフターコロナの国際関係の展望というタイトルでご講演を頂きました。戸澤先生のグループでは、国際関係だけでなく、国内の法・政策のあり方なども研究対象としています。
国際関係に関しては、新型コロナ以前から顕在化していた諸問題(格差社会の進行・米中対立など)が深刻化したこと、今後の国際秩序に関する議論、コロナ対策によって放置された諸問題(気候変動や難民問題など)への取り組みなど、様々な国際課題を取り扱っています。一方、国内においては、今回の緊急事態宣言に関する制定法の規定や、データを扱う際に問題となる個人情報保護に関する事案など、現行法制度の問題点と専門家との関与のあり方などについて議論していると、紹介していただきました。


中尾光之(情報科学研究科教授)  感染症数理モデルのリテラシー

情報科学研究科の中尾光之教授からは、感染症数理モデルのリテラシーと題して、感染症数理モデルの成り立ちから、現在までの応用、限界点などについてお話し頂きました。感染症モデルとしてSIRモデルが代表的なものとして取り上げられていますが、モデルが提唱されてから現在に至るまでの経緯や、数理モデル研究者の中で行われてきた議論などを紹介いただきました。これまでのモデル研究ですでに、感染コホートや潜伏期間、無症候性感染や再感染など、感染症に関連した様々な側面について検討がなされてきており、これらの枠組みを個々の状況に合わせてどう役立てていくかが今後の課題であると述べられました。


木村敏明(文学研究科教授)    感染症と死をめぐる習俗

文学研究科の木村敏明教授は、宗教学を専門とされ、インドネシアをフィールドとして長年研究されています。今回は葬儀と言う観点から、講演していただきました。
葬儀の持つ役割として、単なる遺体の処理に留まらず、通過儀礼や記憶、身近な人物の死の受容や若い世代への死の教育など様々な側面があると言われています。しかし、現代社会においては、葬儀が年々簡素化されており、COVID-19によってこれがさらに加速化すると指摘しています。
また、インドネシアで起きているCOVID-19患者の埋葬方法を例に挙げ、イスラム教の死生観をどのように現場対応に結びつけるかを先導した団体について紹介していただき、日本にもこのような医療の専門家と死の専門家の協働が必要であると述べられました。


赤池孝章(医学系研究科教授)   呼吸器ウイルス感染症の呼気オミックス診断法

医学系研究科の赤池孝章教授からは、呼気を用いた新型コロナウイルスの新しい診断法について講演いただきました。感染患者の下気道由来のエアロゾルに着目し、そこに含まれるタンパク質を解析することにより、非侵襲的で迅速な診断が可能になると、述べられました。また、この技術は新型コロナウイルスのみ留まらず、インフルエンザなど他のウイルス診断にも応用可能な点が強みであると語られました。
 今後は、流体力学や機械学習などの分野と連携をすることにより、感染性や重症度、予後などを含む定性的診断が可能になるのではないかと語られました。

〜総合討論〜

基調講演と8名の先生方の講演を踏まえて、副学長の青木孝文理事をモデレーターにお招きし、総合討論を行なった。歴史・宗教・法律・数理モデル・情報学・医工学など、多方面から新型コロナウイルス感染症をとらえることにより、今後どのような社会構築が必要か、どのような研究がなされるべきか、学際研究重点拠点としてどのような姿が求められているかについて、各先生方の考えが述べられました。
 拠点代表者の押谷教授からは、ポストコロナの社会は次世代が中心となって考えていかなければならず、そのためには若い世代を中心に多くの人にこの学際研究重点拠点に関わってほしいと討論を締めくくりました。最後に、副学長の植木俊哉理事に閉会の辞を賜り、3時間に及ぶシンポジウムは閉幕を迎えました。

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